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松本市中心部土地利用図(地域研究年報45号,2023年)

本図は2022年5月に地誌分野の大学院野外実習で長野県松本市の調査を行った折に作成された土地利用図を製図したものです。

今回製図した地図は縦91cm横81cmとかなり大きな地図でした。大きいだけでしたら製図するのに大した苦労は無いのですが、この地図は巻末に入れる付図に使うだけで無く冊子の本文中に折り込みで使いたいとの要望が有りましたので模様に使う線の太さや線の間隔に大変気を遣いました(おそらく原寸の30%くらいに縮小されるので印刷の線がかすれやすい)。

模様のデザインは前々回の上田市中心部の地図を参考にしてデザインを行ったのですが、ここで二つほど困ったことが出てきました。一つ目は今回の地図では土地利用の他に店舗兼住宅、雑居ビル、住宅併設雑居ビルを表現しなければならなかったのです。そこで二つの表現を考えてみました。一つは太線の実線や破線で区画を囲む方法、もう一つは区画に張り込むアルファベットの文字記号に○や□といった囲み記号を付けて表現する方法です。両方を比較した時に後者だと囲み記号の分だけ文字が大きくなってしまうので、松本駅の駅前にある飲食店が多く入居している雑居ビルが密集した場所では一区画が極端に狭いところが多いので、文字が模様を覆い隠してしまうところが多くなりそうだったので前者の方法を採用することにしました。しかしこの方法でも1cm四方以下の区画の線を約1mm幅の太線で描くと模様を製図する空間はほんのわずかになってしまうので苦労しました。

二つ目は商業の模様です。上田市の土地利用図では商業の表現のサービス業より少し粗めの縦横の格子模様を使ったのですが、この表現だと地図の東端に大きく広がる松本イオンの敷地を製図するのが大変なのです。その理由はこれだけの広い敷地を烏口にインクをつぎ足さないで製図することは不可能なのです。つぎ足しを行うと線の太さや線の間隔に微妙に変わってしまうことで模様にムラが出来る可能性が大きかったのです。そこで最初に考えた模様よりトーンは幾分淡くなりますが目立つような模様にすれば似たトーンの住宅との見分けがつくのではと考えました。ではどんな模様だと目立つのかを考えて思いついたのが二条線を使った斜めの格子模様です。製図した結果はまあ何とか見られるかな? といったところです。

最後にもう一つ、上田市の土地利用図では地図にアクセントを付けるために鉄道の表現は地形図等に使われる記号を使ってなるべく正確に線路を描くようにしましたので今回もそれを踏襲しました。しかし今回は描く範囲が松本駅だけではなく付属の松本車両センターまで含まれていたので線路をどこまで描くか迷いましたが、学生から受け取った原図には線路がほぼ正確に描かれていたのでそのまま描くことにしました。ただし原図の線路表現は全て少し太い実線で描かれていたので、これではアクセントとしては少し弱いと思い、本線系統を目立つ旗竿記号にしてみました。結果は大正解だったと思います。なお松本車両センターはかつての国鉄松本機関区です。私が子供の頃、母の実家である南木曾から東京へ戻る時は必ず松本駅まで普通列車で行き、松本始発の新宿行き列車に乗り換えるのが常でした。新宿行きの列車を待つ間は1番線ホームの端から機関区に出入りするD50型やD51型の蒸気機関車を見て楽しんでいました。約60年前のこんな思い出がある場所でしたので大変楽しく製図を行うことが出来ました。


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