本図は,私が大判の土地利用図を一人で手がけた最初の作品です。この作品の前年の霞ヶ浦地域研究報告1号に玉造町の土地利用図がありますが,これは私が道路や作物の絵記号の写植貼り付けを行い,模様のスクリーントーンの貼り付けは当時院生だった菊地君と伊藤君に手伝ってもらって作った合作でした。
当時の私は立正大学の地理学科を卒業して3年目くらいでしたので地図製図の経験としては統計を地図化した統計地図の作成製図くらいで,このような大判で表現が複雑な土地利用図を製図する能力を持ち合わせていませんでした。そこで大学近くにお住まいだった二宮書店専属のプロ地図製図者である故井上伸一氏にいろいろ助言をいただきながら製図を行いました。本図で使われた表現で特徴的なのは作物を絵記号で表現したことです。これは全て井上氏の発案で,その作物に似たような写植の記号を地図に貼り付けました。当時は面白い表現だなと思いましたが,後年に本図を見返してみると全体が白っぽくて濃淡の差が小さく,また作物の分布も絵記号を使ったために分かりにくいと思いました。もし本図を描き直すとすれば,まず集落の表現は格子模様のハッチで少し濃い目に描き,耕地のうち畑は格子よりは少し淡い斜線の模様にします。
そして面積が比較的広い水田やハス田はこの地図と同じように横縞のハッチにしますがハス田の方をもう少し目立たせたいので使用する線の太さをこれより少し太くして水田との濃淡の差を付けると思います。しかしこれだけでは地図にアクセントがないので,湖岸低地や谷地田と台地の際にケバ表現を入れて地形の凹凸も出してみたいと思います。